町屋ボーイズとRRの友情
文と写真:有村遊馬
東京都荒川区町屋。
関西出身の私は、恥ずかしながらRRの仕事に関わるまで聞いたことがない地名だった。
それがこんなに思い入れのある町になるとは。
◇
RRの珈琲屋台が走り始めてまだ二日目の2021年6月26日、町屋への初出店だった。出店場所をお借りするオーナー様やご近所の方にご挨拶と、我々がどういう思いでここに来たのかをご説明した。
今だから言えるが、その時は実は、まだ自分達も半信半疑だった。焙煎の煙や香りが近隣にご迷惑をおかけしてしまわないだろうか?本当に近所の人しか通らなそうな、住宅地のド真ん中で、お客さんは来てくれるのだろうか?
しかしすぐに、そんな心配は無用だったことがわかった。
学校帰りの小学生や、保育園に迎えに来た保護者の方たちなど、地域の方々がみるみる集まってきた。そこには初日からもう、RRが実現したかった姿が出来つつあった。
そんな町屋での最大功労者はもちろん、宣伝部長R君だ。
いつも必ず遊びにきて、たくさんおしゃべりをしてくれる。それだけでも珈琲屋台の私達はとても嬉しいのだが、道行く人達みんなに声をかけてくれるのだ。
「コーヒー飲んでってー!」
そんな元気な呼びかけに、誰しもついつい立ち寄ってしまう。みんなが笑顔になって、その傍らにコーヒーが寄り添っている。
びっくりすることに、通る人達のほとんどがR君の友達なのだ。それも、ベビーカーに乗った赤ちゃんから、おじいちゃん・おばあちゃんまでみんな。
R君といつも一緒に遊びにきてくれる町屋ボーイズ(と私達が勝手に呼んでいる)の構成メンバーだって、小学校の低学年から中学生までと幅広い。みんな一緒になって遊んでいる。こんな光景が、東京23区で見られるとは思っていなかった。
その後のエピソードにも事欠かない。
◇
23年5月、諸般の事情により、そんな町屋での定期出店を終えることになった。
最後の日、いつもの町屋ボーイズたちが集まってくれた。
「みんなでラーメン食べよう!」の声がけで、カップラーメンとジュースを持ち寄って、打ち上げ?だ。
これまでの思い出をフォトブックにまとめた。御礼を込めて町屋ボーイズたちにプレゼントした。
彼らとのこれまでの写真を振り返り、まだ幼さの残る2年前から比べると、ぐっと凛々しい表情に成長していたことに驚く。
「一生の思い出。またみんなでコーヒー屋にいこう」
最後にそんなメッセージをくれた町屋ボーイズとR君。
30年ほど前、かつて自分も子どもだった頃を思い浮かべると、「あの公園にこんな人がいたな・・」という記憶が断片的に呼び出される。
町屋ボーイズたちにとってのRRも、単なるコーヒー屋でもキッチンカーでもない、いつかまた思い出す青春の1コマに残る存在になれただろうか。
私たちにとっては、立場も年齢の違いも忘れ、友だちのようなつながりを感じられる、やさしい絆のできた場所だった。