好きな季節の話をしたい
文:濱矢彩生
写真:有村遊馬
海のある街に住んでいる。
青々と茂る緑を
キラキラと目が開けられないくらいの日差しを
東京では聴くことのできない蝉の爆音を
飲む日焼け止めなんて飲んでるのが馬鹿馬鹿しくなるような容赦ない紫外線を
たまに吹くどこまでも連れてってくれそうなさらさらとした風を
自転車で海に向かいながらわたしの五感で受け止める。
夏がきたと思うと同時に生きててよかったと思う。
そんな夏が今年も終わろうとしている。
「好きな季節はなに?」
わたしが好きなトークテーマの1つだ。
どう見たって夏が好きでしょ、と思われるわたしだが
ちいさな頃から冬が1番好きだ。
特に、夏に思い出す冬って好き。
鼻がツンとする冷たい空気
東京でたまに降る、すぐに溶けてしまう雪
バッカスの置いてあるお菓子コーナー
毛糸でつながれた左右の手袋
掘りごたつで食べるアイスクリーム
街がイルミネーションで彩られ、
みんながどんなプレゼントを贈るか考えながら過ごす。
わたしの誕生日も冬にある。
12月の寒い日に生まれたわたしに、
父と母はイルミネーションのように彩りのある人生を生きてほしい、という願いを込めて「彩生」という名前をくれた。
話は変わるがわたしは、
来月から 心機一転 生まれて初めて海外に住む。
これから住む街は1年のほとんどは雪が降る、
ピカピカのイルミネーションがたくさんあるところ。
季節はきっとほとんどすべて冬だ。
「好きな季節はなに?」
という話はもしかしたらもうしばらくできないのかもしれない。
でも、色んな言語で春夏秋冬
全部を表す言葉があるから世界のみんなもこの話をするのかも。
今年の冬は、その後の春は、夏は、秋は これからの人生は
どんな彩りがあるのか、とびきりに楽しみ。