私たちの旅の「意味」
忘れないでいてくれてありがとう。
「忘れないでいてくれてありがとう。」
この言葉にはっとした。
3年前から始まった、この復興支援の旅。
1年に1回の出会いにも関わらず、RR COFFEEを心待ちにしてくれている存在がいると知った。
時を重ねるにつれ徐々に災害の記憶が薄れていく中で、被災地を忘れずにいることだけでも支えになっているということを知った。
復興支援というものは、災害直後だけでなく長期的に継続していくことがどれほど大切なことなのか、痛いほど知った。
西間(にしあいだ)第1団地 / あやめ広場団地 / 相良(さがら)団地
会話の中に、心の奥底に秘められた住民の方々の複雑な思いが見えた。
過ぎ行く年月とともに少しずつ気持ちの整理をし、自分自身が前を向く為にも辛いことの多くは語らない、そんな強さを感じる場面もあった。
以前と同様、ひとりでの移動が難しいなどで、なかなか部屋を出られない方には外からお声がけをしながら、各部屋にコーヒーを運んでまわった。
あるお部屋のおばあさまへコーヒーを届けた際、豪雨被害のお話しで一つ、こんなことを聞いた。
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目の前の濁流から命からがら逃げ、一時的に熊本で有名な旅館に身を寄せた。 この時はレスキューの手助けが無いと避難所への移動すらもできない状態だったから、この旅館で移動の順番待ちをしていた。
旅館の女将さんもすごく大変な状況だっただろうに・・
「これぐらいしか無事な食糧が無くてごめんね」と、アイスクリームを手渡してくれたの。
押し寄せる濁流に訳も分からず慌てて移動して。
飲まず食わずでどのくらい経っただろうね。
久しぶりに口にしたそのアイスクリーム、本当に本当に涙が出るほど美味しかった。
今はこうしてRR COFFEEのあたたかいコーヒーを一杯、大切に飲めていることがシアワセよ。
今年も来てくれることすごく楽しみにしていたの。 暑い中、遠いところから来てくれて本当にありがとうね。
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コーヒーが入ったく紙コップを両手で包みながら、やさしく語りかける眼差しに形容しきれない気持ちが全身を駆け巡った。
この時「シアワセ」と「ありがとう」の重みを受け止めきれず、言葉にならない想いは形を変えて頬を伝った。
RR COFFEEにできることは、きっとまだまだある。
「手伝って欲しい」と言葉にすることが難しい方へも、そっと差し出す一杯のコーヒーで広がる可能性は無限大だ。もっともっと、もっとたくさんの方々へこの想いをのせたコーヒーを届けていきたいと強く思った。
また、嬉しい再会にも恵まれた。
昨年の遠征で知り合った住民の方と、今年もお会いすることができた。
RR Tシャツ(目の覚めるようなオレンジ色)を見て、こちらに気付き話しかけてきてくれたのだ。
Tシャツ・・ちょっと派手かな?なんて思っていたが、こうしてすぐに見つけてもらえるのは利点かも、なんて思ったり。
今年も会えるかな・・と考えていた矢先の再会に心が躍った。
今の団地での暮らしについてたくさん教えてくださった。
徐々にご近所付き合いが縮小する中、珈琲屋台を囲んで住民同士で繋がることのできる今日みたいな日がとてもシアワセだと語ってくれた。
続けてきたこと、出店の意味を熊本の皆さんが掬い上げてくれたような気がして。
大きな無償の愛でぎゅっと包まれたような感覚がして。
大袈裟でも何でもなく、熊本に来れて本当に良かった。
流れる年月に災害の記憶を風化させないこと。
3年目となる今回の旅で、ようやく継続することの意味が見えてきたような気がした。