待つ、待つ、待つ
写真と文:Soichiro Kano
人生はじめてキャンプをした。
整備されていない地面。
火をつけるのも一苦労。
カレーが完成するまで、想像の五倍ぐらい時間がかかった。
自然の中で、ひたすら待つ、待つ、待つを繰り返した。
面倒くさいこの空間に、いつしか忘れていた豊かさを感じた。
こう、密度の高い時間というか、味のある時間というか。
不便だなあと思いながら、これがいいよなあと思わせてくれるような
待つ、待つ、待つが、そこにたくさんあった。
手紙を出して、毎朝郵便箱を確認する時間。
メールを送って、今か今かと返信を待つ時間。
SNSでシェアして、いいね!を待つ時間。
それがいつしか、動画サイトのたった数秒の広告にも耐えられなくなってしまった。
豆を挽きお湯を沸かし、美味しいコーヒーが仕上がると信じて
待つ、待つ、待つ。
繋がらなかった関係も、いつか繋がると信じて
待つ、待つ、待つ。
僕たちに必要なのは、待つ、なのかもしれない。
豊かさって、面倒くさいねえ。