島に呼ばれて ー伊豆大島ショートトリップ・前編ー
写真と文:有村遊馬
ゴールデンウィーク初日、大雨予報でキャンプの予定が変更になり暇を持て余していた。なぜか突然、島に呼ばれた気がした。
今こそ行くべき!と謎の旅欲が沸騰し、翌日夜に出航するフェリーチケットを買った。行き先は、伊豆大島。私は関東に住んで数年になるが、伊豆諸島は初めてだ。
翌日、東京・竹芝港には、釣竿を持った人達や、サイクリスト達、その他若い人達が溢れていた。皆ワクワクが抑えられない様子が見てとれる。定刻通り船は出航した。握ったチケットは、一番安い2等室。いわゆる雑魚寝部屋だ。学生風の団体もたくさんいて、早速何かのゲームで盛り上がっている。甲板に出ると、もう宴会が始まっている。不思議と嫌な気にならない。いいぞ、やれやれ!自分だってもし学生だったとしても、間違いなく、同じことをしている。みんなで船旅、最高やん。程なく、船はレインボーブリッジの下を通過した。
あっという間に翌朝6時、大島の岡田港に着いた。文字通り港に降り立つ瞬間の、なんともいえない高揚感がたまらない。路線バスに乗り、島で一番栄えた元町港エリアへ移動。予約していたレンタル電動自転車を受け取った。さすがゴールデンウィーク、レンタカーもレンタル原付も全て出払い、自転車しか借りられなかった。まあ、それも悪くない。
宿のチェックインまで温泉で休んでいると雨が降り出した。今日は夜までずっと止まないらしい。雨足は強まるばかり。途方に暮れていると、レンタル自転車屋のお父さんが「宿まで乗せてやろうか?」と優しいご提案。自分の名前を聞くや否や、鹿児島にルーツがあることを見抜かれる(私の父が鹿児島出身)。大島には九州人が多いそうだ。縁と言ってよいのか分からないが、それだけでなんとなくこの島とお近づきになれた気がした。
その晩は、地元の方に大人気の焼き鳥屋にて。座ったカウンターの隣には一人旅のお兄さんと、地元のお父さん。こういう一期一会は一人旅ならでは。「一人で旅行して寂しくないのか」と聞かれることもあるが、一人旅だからこそ話しかけてもらいやすい。すっと、旅先のコミュニティに入り込んでいける。
話は盛り上がった。伊豆諸島それぞれの島ごとに蒸溜所があって、東京島酒文化があることを学んだ。島によって気候や文化も少しずつ違っている。火山島としての形成過程があり、沖縄や鹿児島の島々ともまた異なった歴史がある。
東京にこんな離島文化があることが、とても新鮮だ。小さな島なのに、地元の方々が話す言葉はちゃんと?東京弁というか標準語なのも面白い。車は品川ナンバーだ。
初日から、上々の滑り出しだった。自分の中の旅のスイッチが、カチっと入るのを感じた。
(後編はこちら)