島に呼ばれて ー伊豆大島ショートトリップ・後編ー
写真と文:有村遊馬
(前編はこちら)突然の旅欲の爆発により訪れた伊豆大島。初日は大雨に見舞われながらも地元の方々に助けられ、幸先のよいスタートを切った。
後編では、さらに天気、絶景、素敵な喫茶店での出会いに恵まれ、大満足で旅を締めくくるのだった・・・。
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二日目、天気は快晴。島の中心にある活火山、三原山に登ることにした。島一周サイクリングと迷ったが、結論からいうとこれで大正解だった。
登山口までは電動アシスト自転車で駆け上がった。真っ青な空と海が最高に気持ちいい。
溶岩避けシェルターが点在する登山道を上り、ものの30分ほどで標高700メートル余りの山頂に着いた。そこから火口をぐるっと一回り。
山頂からの景色は、360度見渡す限り海だった。鳥の鳴き声と、自分の足音しか聞こえない。
火口からは煙がモクモクと上がっており、いまだに火山活動が進んでいることがよくわかる。1986年にあった噴火時には、マグマがなんと1500mの高さにまで噴き上げたというから恐ろしい。そんなマンガに描いたような噴火が、東京都内の島で起きたなんて信じられない。
下山途中に見つけたテーブルで、コーヒータイム。絶景を見下ろしながらのうなぎロースト・エチオピア。さ、最高やん・・・
港に戻り、島で一番人気の「寿し光」にて。既に三原山の絶景、海の絶景を眺める露店風呂を2軒ハシゴしている。それに飽き足らず、海に落ちる夕陽を見ながらの生ビールと、大島名物「べっこう寿司」。もう、言葉が出ない。
3日目、あっという間に最終日だ。「観光喫茶もももも」にて、マスター・柳瀬さんに出会った。お客さんに少しでも良い思い出を持ち帰ってもらいたいという想いが溢れていた。
曰く、かつて大島の観光客が今の何倍もいた時、放っておいてもお客さんが来てくれるので、多くのお店のサービスがどんどんぞんざいになっていったそうだ。結果、じきに観光客が離れていった。柳瀬さんは、そんな失敗を繰り返したくないという思いから、また来たくなるようなおもてなしを工夫されている。たとえばお客さん一人ひとり名前を伺い、2回目の来店で柳瀬さんご自身がデザインされたかわいいトートバッグをプレゼント(柳瀬さんはかつてデザイナー・イラストレーターとしても活躍されていた)。
(左:柳瀬マスター、右:筆者)
こだわりの焙煎コーヒーも、信じられないくらい良心的。モーニングセットなんて、食事がつくのにコーヒー1杯と同じ値段!これも、都心のチェーン店にできないことをやりたいという、柳瀬さん流のおもてなしだ。
「朝、港に着いた人が休める場に。天候が悪くて旅行計画が狂っちゃった人も、ここで練り直してもらえたら。そんな時でも窓から海と山を見て、景色を楽しんでもらいたい。」
お客さん一人一人と、心のこもった会話をされていた。少しでも大島観光を楽しんでもらいたいという気持ちが伝わってくる。
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穏やかな島時間を堪能できる素敵なお店。島民のみなさんの温かいおもてなし。海と山の絶景、島の暮らしと独自の島焼酎。こんなに都心近くで非日常を味わえるなら、また違う島にもいってみたい。短くも充実した、伊豆諸島初上陸の体験だった。次は島キャンプでもしようかな~